Xbox 360 シューティングラブ。10周年 『開発こぼれ話』その19『シューティングラブ。ディケイド』その5[まとめ]

おさらいしたシューティングタイトルは7つ。移植版やイベント限定タイトルもカウントするとその2倍以上有る。なかなかに個性的なタイトルが揃っている。毎年1本以上のペースでシューティングゲームを作っている。我ながら随分作ったと思う。

前半はパッと見スタンダードなシューティング。後半はパッと見から違いが醸し出されるよう工夫が盛り込まれたゲームになっている。シューティングを何とかするにはそうしなければならないと考え始めたから。また、時流に沿ったからとも云える。シューティングが好きで業界に入ったので自分が好きだった80~90年代のゲームのような過去の流れに沿ったコンサバなモノを作りたい気持ちは強いが、ゲームセンターのゲームは何かしら新しい刺激がなければならない。最新作『コンバットジール』を収録している『ゲーセンラブ。~プラス ペンゴ!~』から使用する基板がそれまでのモノと大きく変わった。ワイド液晶筺体、IDカード、ネットといった今までは使えなかったデバイスが有る。それは過去には無く現役で業務用シューティングを作る立場でなければ経験出来ない状況。10年経って最前線に居る事がうれしい。新しいデバイスにワクワクする。80~90年代にアーケードゲームを作っていた人達も急速な技術の進化にワクワクしていたんだろうと想像すると楽しくなってくる。

さて今回おさらいした7つのシューティングの内6つはXbox 360『シューティングラブ。200X』と『シューティングラブ。10周年』でプレイする事が出来る。00年代のシューティングを語る上で外せない、きっと後に評価されるゲームが詰まっている。

Xbox 360 シューティングラブ。10周年 『開発こぼれ話』その18『シューティングラブ。ディケイド』その4[第3期トライアングル・サービス]

マイナスゼロマイナスゼロ
マイナスゼロ2009年
当社では珍しいゲームセンターでは遊べないゲーム。
業務用『シューティングラブ。2007』の移植版、Xbox 360『シューティングラブ。200X』に収録しているアブストラクトシューティング。開発スケジュールに少し余裕が有ったので1週間で製作したゲームだ。敵をロックオンするとその分だけ誘導弾を撃つ事が出来、爆発エフェクト中は自機が無敵になる。シンプルで有りながら奥深いゲーム性を兼ね備えている。プレイヤーストックが無く1回のミスでゲームオーバーになるシステムが成り立つナイス調整。本作のサウンドはSHOWERHEADZ。それ以外は私が担当。
○ 敵
◇ ロックオンサイト
△ 自機
まるしかくさんかく3つの記号的なキャラだけで構成されているのもオモシロい。
『シューティングラブ。200X』以降の当社、固定メンバーは私だけといった形で製作している。マンパワーに劣るので結果的にアイデア重視のスタイルになっている。現在まで続く第3期トライアングル・サービスはここからだ。

コンバットジール
コンバットジール2012年
2012年に稼動開始した業務用『ゲーセンラブ。~プラス ペンゴ!~』に収録している4人まで参加可能なマルチ画面対戦シューティング。プレイヤー毎に独立した画面を持ち、他プレイヤーが敵を破壊すると自分の画面の同じ敵が×と表示され消滅し撃ち返し弾を撃ってくるといった半同期を基本としたゲームシステム。他にもパワーアップを使用した妨害や、妨害要素の無い純粋なスコアアタック勝負がある。
ゲーセンラブ。に収録する新規シューティングとして候補に有ったのはトライジールの様なスタンダードな物やワイド液晶画面を活かした横シュー、マイナスゼロのAC版等が有ったが、短い開発期間でも製作可能な最もインパクトの強い本作を製作する事になった。開発期間は約1ヶ月。2013年現在トライアングル・サービス製シューティングゲームの最新作だ。
コンバットジール

Xbox 360 シューティングラブ。10周年 『開発こぼれ話』その17『シューティングラブ。ディケイド』その3[第2期トライアングル・サービス]

トライジールトライジール
トライジール2004年
デルタジールの精神的続編となる3Dを用いた王道スタイルのシューティング。本作以降のプロジェクトは基本3Dを用いて製作している。変形する事によりワイド/ミサイル/レーザーを任意にパワーアップする事が可能という実にスタンダードな作りだ。

 

 

シューティング技能検定シューティング技能検定
シューティング技能検定2006年
当社製で最も有名なゲーム。初出は2006年のトライジールPS2版のおまけゲームとして。2007年にエクスジールとの2in1『シューティングラブ。2007』として業務用で稼動開始。
ゲームの腕前を『ゲーマー年齢』として測定するシューティングゲーム。ゲーマー年齢以外にも、失敗する事が楽しさに繋がるゲーム性や残機制廃止、コンティニューやゲームオーバーが無く誰でも最後まで遊べる。といった業務用シューティングの常識を覆した革新的なゲーム。あまりそういった褒め方をされないので自分で書いてみる。
2007年には本作の対戦をフィーチャーした全国大会を開催した。

 

エクスジールエクスジール
エクスジール2007年
トゥエルブジールの精神的続編となるシューティング。
レバガチャをする事によって短時間で溜められるチャージショットを軸にギミックを凝らしたステージを進んでゆくシューティング。トライジール開発時に掴んだNAOMIの特性を活かす為のゲーム性でも有る。背景の多くは私が製作した。本作はシューティング技能検定との2in1で当初はエクスジールを売る為に技能検定はおまけで付けるといった関係だったが、技能検定の方が好評だった為、本作がおまけの様な扱いになっている。
今回映像を収録する為に久しぶりにプレイしてみたところ、実にオモシロい。トゥエルブジールの時に実現できなかった仕掛けがどういったものだったかを忘れてしまうぐらい久しぶりにプレイしたのでイロイロ新鮮。こういった変化球のシューティングもたまに遊ぶとじわじわ楽しくなる。そういったものは他社さんからは出る気がしないので、またいつかトライしたい。
本作までが高校時代の同級生にデザイナーを務めてもらった第2期トライアングル・サービスだ。

Xbox 360 シューティングラブ。10周年 『開発こぼれ話』その16『シューティングラブ。ディケイド』その2[第1期トライアングル・サービス]

デルタジールデルタジール
デルタジール2002年
トライアングル・サービス初仕事の業務用シューティング。90年代のシューティングと言えばショット/ボム/縦画面だ!正にそのままな王道スタイルを目指した。全てはこのゲームから始まった。

 

 

 

トゥエルブジールトゥエルブジール
トゥエルブジール2002年
稼働時期がデルタジールと被ってしまった為、レバガチャで強力な攻撃をするという1アイデアで突き抜けたゲーム。王道のデルタジールが表、本作が裏の関係になる。ここまでの2作が元セイブ開発のデザイナーによって支えられた第1期トライアングル・サービスだ。

Xbox 360 シューティングラブ。10周年 『開発こぼれ話』その16『シューティングラブ。ディケイド』その1

『シューティングラブ。10周年』発売記念集中更新もそろそろ最終回。トライアングル・サービスのシューティングゲーム10年分のおさらい。先ずは動画を。一部の映像はXbox 360『シューティングラブ。200X』のリーダーボードに登録されているリプレイデータから収録させて頂いた。感謝!

Xbox 360 シューティングラブ。10周年 『開発こぼれ話』その15『XIIZEALからTRIZEALへ』その3

前回の話題に出てきたXIIZEAL/PCデバッグ版の映像だ。通常は見えないフレームバッファ以外のVramも表示している。PSとGNETの違いが分かる人がニヤリとする動画だ。

開発で使用しているPCはCorei7。PC版XIIZEALが爆速で動く。ソフト的に大きな変更はバイトオーダーの違いぐらいだから簡単にXbox 360で動かせるだろうと思ったら、そうは簡単に行かなかった。とりあえず動いたXbox 360版はスローだったのだ。

ひとまず高速化の手段としてSIMDを試す。PC版を作った頃はマルチメディア命令MMXって言ってた奴だ、使う機能はパックド演算。XIIZEALはαブレンド等の透明演算を多用しているのでRGB各要素を一度に演算出来るパックド演算を使用すれば処理時間の短縮が出来るはずだ。実際PC版では15fps程度高速化出来た。それに合わせPSの16bitフレームバッファを32bitフレームバッファに切り替える機能も既にある。32bit版なら16bitピクセル情報をパックド演算する32bit形式にその都度変換する必要が無いのでかなり高速化出来るはずだ。やってみた。驚いた。まったく速くならない…頭を抱えた。アーケード押しの僕は家庭用機のPSでは再現出来ないようなゲームにしようとPSの1.5~2.0倍の性能を誇るAC基板GNETの限界近くまでαブレンドやVramを使いまくっていたのだ。そんな当時の自分を軽く呪うが、そんな場合では無い。タイムリミットは容赦なく迫る。

計算を高速化しても状態は変わらない。計算に必要な値をメモリから持って来るのと計算結果をメモリに書き戻す処理が遅いのが原因だった。頭の回転を速くしてもデータをやり取りする足が遅いのでどうにもならない。さすがに7年前の2005年に出たゲーム機のRAM速度は現状のコンピュータ事情からすると時代遅れ。Xbox 360にも高速なRAMは有るがそれを使うにはDirectXのルールに則って作らなければならない。残念ながら今回は自前ソフトウェア描画なので、その対応をするには軽く1週間は必要。しかもそれで解決する保証はない。他に使える機能は無いものかMSの資料を閉じてひとまずググった。なぜならMSの資料は適切な情報の集約と編集がなされておらず、知りたい事柄に辿りつくまで無駄な時間が掛かるからだ。じっくりと資料を当たる時間が惜しい程事態は切迫している。

Xbox 360のCPUは3コア。使えそうなモノが見つかった。現在の動作速度は目的の70%程度、偶数フレームバッファと奇数フレームバッファを別のコアで並列に処理すれば倍の140%のパフォーマンスが出るはず。プログラムの修正も小一時間で行ける。試してみた…

見事解決!何が役に立つか分からない。ゲーセンラブ。の開発時レガシーデバイスであるJVSのレスポンスを改善する為、使用していないCPUコアを用いてアクセス時間を隠蔽する実験をしていたプログラムが参考になった。お陰で発売日を遅らす事無くプロジェクトは進行したのだ。

Xbox 360 シューティングラブ。10周年 『開発こぼれ話』その14『XIIZEALからTRIZEALへ』その2

XIIZEALを思い出した。XIIZEALで使用した基板はPS互換基板、PSということは全ての描画がポリゴンなのだ。どんな複雑な3Dゲームも最終的に絵を描画する方法としてメモリに絵に見える数値をセットしてゆくのは変わらない。その部分は良く分からん数式を知らなくても最近までやっていた事なので理解出来る。その部分から勉強する事にした。習作としてXIIZEAL/PC版の開発をスタートした。

ポリゴン描画する場合、転送速度を稼ぐためモデルデータが多角形やトライアングルストリップやカーブを使用して頂点情報等を節約した形で構成されていたとしても最終的には三角形に分割される。
仮ザコ
アクション技能検定の試作時の仮モデル。データサイズを稼ぐために四角形ポリゴンが多いが、プログラムで読み込んで表示する際には三角形に分割される

三角形ポリゴン描画をソフトウェアで実装すればXIIZEALがPC上で動作するはずだ。ポリゴンの描画の仕方はおおよそこんな感じだ。
poly

  1. 表示するテクスチャ uvがテクスチャ座標
  2. パラメータabcそれぞれxyuvの値を持っている abの差分acの差分bcの差分情報をもとに描画に必要な値を計算する
  3. (2)の計算値を使って(1)のテクスチャデータを横方向に1ドット毎Vramにセットして行く

この実装を入れXIIZEALのPC版は完成した。セレロンとかPEN3/4の時代で30~40fps程度の速度。今回のXbox 360『シューティングラブ。10周年』XIIZEALはこの時のプログラムがベースだ。描画部分がセパレートされているので移植し易くなっている。過去に出たPS2版やPocketPC版もこのXIIZEAL/PC版が元になっている。ちなみにそれらの移植は他社によるもの。

ポリゴンをVramに1ドット毎描いて行くなんて事普通はしません。ライブラリとか使えば楽だから。でもそういった事をやっておくと実際の描画にはどういった情報や計算が必要なのか良く理解出来るので3Dソフトで作ったデータをゲームで使う形式に変換するコンバータを作ったりする際に大いに役立つ。実際XIIZEALの後に作ったTRIZEALではコンバーターや描画システムは全て自作だったのでいい勉強になった。

Xbox 360 シューティングラブ。10周年 『開発こぼれ話』その13『XIIZEALからTRIZEALへ』その1

業務用デルタジールとトゥエルブジールの開発が終了し、次のプロジェクトはドリームキャスト互換業務用基板NAOMIを使用する事になった。それまでトライアングル・サービスは個人事業であったが、NAOMIを使用する為にはセガと法人対法人の契約をする必要があった。法人で無くてもゲームを出せていたのでそのまま継続出来れば良かったが状況はそれを許さない。ゲームセンターに自分の作ったゲームがひとつでも置かれると嬉しい。その希望は叶ったが、まだまだやりたい事があったのでゲームを継続する為、会社を興すなんてめんどくさい事はしたくなかったが腹くくって法人化したのだ。2002年10月の事である。今回のソフトに付いてくる取扱説明書背表紙の写真が当時の事務所の様子を写した貴重な一枚だ。あれ以外の写真は残っていない。早いものであれから10年経ったのだ。初心を振り返る機会として『Xbox 360 シューティングラブ。10周年』プロジェクトは良いものだった。

さて次のターゲットがNAOMIに決まり、時流に沿って3Dポリゴンのシューティングを作る事になったが、大問題。僕は数学を知らないのだ。
中学・高校と授業はもちろん有ったが、まったく興味が無かったので授業中はずっと小説を読んでいた。高校になるとそもそも授業に出席しなかったりだ。
いざ3Dのゲームを作るかと資料を見ると、知らない記号の並んだ数式がてんこ盛りなのでちんぷんかんぷん。どうしたものか。
math
読み方すら知らない記号が並ぶ

Xbox 360 シューティングラブ。10周年 『開発こぼれ話』その12『ツールその3』

ツールはまだ有る。
トゥエルブジールの開発のみに使ったプレイステーション(以後PS)互換業務用基板GNET用のツールだ。X68000 XVIと無印X68000の関係と同じような性能差があり、PSの1.5倍ぐらいの性能があるのがGNETだった。VRAMにはイメージを2次元で配置するので、容量を効果的に使用するには目で確認しながらパズルの様に隙間なく画像を並べるようなツールが無いと手間のかかる作業だった。オフィシャルでそういったツールも用意されていたが、ちょっとかゆい所に手が届かない感のあるものだった。それにPS用だったのでGNET用として使うには若干足りない部分もあった。さて。

実は昔所属していた会社でそれ用のツールを作った事があった。当然PS用のツールであったが基本は同じ。作り方は知っているのでそれをGNET対応で作り直したのが今回のツールだ。bmpからGNET用のフォーマットに変換したり画像を並べ易くなるよう2/4/8ドット毎スナップ出来るようにもなっている。オブジェクト単位でリストを保存し別ツールでゲームで使用する形式に変換していた。VRAM全体が見えるので背景やオブジェクトにどの程度容量を使用可能か計算をするのにも重宝した。ちなみにツール類は他社のものと比べこういったツールをデザインし易かったBorland C++ Builderで作っていた。このツールのオリジナル版を作っていた会社でC++ Builderを用いて業務で使用するツール等を作っていたので、ソフト購入担当者に会社の経費でC++ Builderを購入するようお願いしたのだが叶わなかった。良い思い出だ。いやそんなバカなって話だ。

しかし2次元って珍しい。他のコンピュータでそういった仕様のモノはあったのだろうか?きっと無い。やはりライバル機であるセガサターンの様に1次元の方がメモリを無駄にする事無く簡単に効率的に使えるからだろう。

Xbox 360 シューティングラブ。10周年 『開発こぼれ話』その11『SE/BGM』

業務用で出ていたデルタジールはSE/BGM共に4bitADPCM/8khz。とりあえずBGMをそのまま入れてみたが音質が悪くトゥエルブジールとの差があり過ぎた。そこでオリジナル音源44.1khz版を入れてみたが、SEとのバランスが悪くなった。もうひと押しSEも44.1khzにしてみたところ、今度は音がクリア過ぎて2Dドット絵全開な90年代を感じる画面とマッチしなくなった。

 最終的にはBGMにZOOM音源、SEにPS内蔵音源を使用してやけに高音質だったトゥエルブジールとのバランスをとる為、デルタジールはBGM22khz、SEは聞こえ方のバランスを取りつつ11~22khzで作成した。ちなみにスペシャルパック同梱サントラのデルタジールBGMはオリジナルの44.1khz版だ。